トンガリ’97

とあるチャーハン王

小4-お湯が出ない

T君に放課後遊ぼうと誘われた。

その日は月曜日。書道教室があったから覚えている。

習字終わったらすぐ行くよ!と伝え速攻で帰宅。

チャリを全力で漕いで教室向かう。

早く終わらせたいからといって

適当に書いていたら先生にバレるので集中して仕上げた。

また家までチャリを全力で漕ぐ。

バッグを置き、すぐさまTくんちへチャリを全力で漕ぐ。

16時前くらいだったと思う。

Tくんは近所の子たちと戯れていた。

僕も合流。

やっと遊べる。浮足立っていた。

 

そんな矢先、悲劇は起きた。

 

駐車場がガラ空きだったのでペットボトルを蹴って遊んでいたところ、

誰かが勢いよく蹴ったペットボトルが民家の敷地へ入ってしまった。

ここで放っておいたらよかった。

「取ってくるわ!」

なぜか僕は率先して塀を上った。

下を見下ろすと意外と高い。

このまま飛び降りて着地するには勇気がいる。

一旦、水道パイプに足をかけよう。

パイプに体重をかけたその瞬間、勢いよく水が噴射した。

水道パイプがぶっ壊れたのである。

「やばいやばい」

みんなの声で事の重大さを認識する。

ペットボトルはもうどうでもいい。

一目散に逃げた。

Tくんと罪悪感に浸りながらもバレないだろうと慰めあった。

しかし、その民家はTくん家から徒歩10秒なのである。

 

帰宅。

夕飯を食べるも、あの水道パイプが気がかりで何も味がしない。

あの家は水を使えているのだろうか?風呂に入れるのか?

申し訳なさで胸が苦しくなる。

 

「トゥルルルル」固定電話がなる。

 

まさか。

 

 

母が電話に出る。

 

僕の方をチラッと見た。

 

あー。

 

Tくんの母親からだった。

民家の人に謝るので来てほしいとのこと。

母親に怒られなかった。

母と2人でTくんの家へ向かった。

足取りが重かった。

民家の人はさぞかし怒っているだろう。

 

いざ、謝罪。

民家には70代ほどの夫婦が住んでいた。

「風呂沸かそうと思ったらお湯が出ないんだよ(笑)」

おじいさまは優しい笑顔で言った。

ホッとした。

怒るどころか僕らに世間話をずっとしてくるのである。

鬱陶しい。早く帰りたい。

10分ほどで解散。

母に優しい人で良かったねと言われた。

翌日、学校でTくんに会うとほぼ同時にお互い謝った。

悪いのは僕である。

 

水道パイプを破裂させた快感は僕しかわからない。

またやりたい。